カメラマンのお仕事、2年目のはなし⑩

江差町は、資源のある町だと思う。
「資源」と言っても様々だが
人、モノ、文化、歴史、自然… 様々に
檜山管内では、恵まれたほうではないだろうか。

もちろん、田舎町の何もないところではあるのだが
本当に何もないのか
何もないことにしてしまっているのか
観光資源となり得るものはまだまだ埋もれていると感じている。

私はその町で
一体「何が」出来るだろうか。
そして、「何を」すべきなのか。

もちろんだが
その答えは、そんなに簡単ではない。

それでも何となく
「人」が集まったり
寛いだり、繋がったり、癒されたり、

そしてほんの少しでいいから
私が私の感性で私の表現が出来る場所
そんな「場所」が、もしも作れたなら…

― きっと、楽しい。

確信はないけれど
やれるところまで、やってみたらいいのかもしれない。
そう思った。

少しだけ昔ばなしをしよう。

若い頃
好きな事はしているはずなのに
遊んでばかりなのに
いつもどこかで「足りない」と思っていた。
遊ぶ場所がない。
欲しいブランドのショップもない。
したい事も欲しい物も、全然すぐここにない!
札幌にいたって、この程度。何もない。つまんない。
そんな事をいつも根底に思っていた。

飛行機に乗れば、どこにでも行けたし、何でも出来たのに
東京でも外国でも、どこにでも行って
本当に好きなことをとことんやれば良かったのに
私は何もしなかった。

お金がないとか言い訳して
それは、自分とはどこか違う世界のことだと決めつけて、
ただ、そんな新しい世界に
足を踏み入れる勇気が自分になかっただけなのに
世界を知るのが怖くて
本気でやっている人と自分を比べるのが怖くて
全然自分に自信がなくて
自分のやってみたいに
真正面から向き合うことから逃げていたのは私なのに。

ただ与えられた「楽しい」を消費しては
自分で空っぽにした箱に「何も入ってない」と駄々をこねていたのは
誰でもない、私だった。

今でも自信は、ない。
実は笑っちゃうくらいに、自分に自信のない人間ではあるのだけれど
それでも、
与えられた物だけを消費しては「何もない」と言うのは違うんだとわかった。

何もないなら、作ればいい。
自分で自分の「楽しい」を作ればいい。

蔵のオーナーも
そんな風に使ってくれるなら…と背中を押してくれた。
どうしたらいいかわからないけれど
幸い、ゆっくりと考える時間はありそうである。
こちらに向きかけた
名前のつけようもない、流れの、行きつく先は…

きっと、悪くないはずである。

---

そんな頃

遂に
パソコンの支払いが終わろうとしていた。

そもそもの大前提、
私がカメラの仕事を始めた、きっかけもきっかけ
毎月1万円の返済も、残すところあと数回となったのである。

ようやく、2年。
と言いつつも、あっという間の2年だった。
大きな失敗も、大きな挫折もなくここまで来れただけで
本当に感謝しかないのだが
何か大きな分かれ道にいるような気持ちだけが
ずっと心に引っかかっていた。

カメラマンになりたい訳ではない。と言いつつも
「いつまで」この仕事を続けるのか。
しつこいくらいに自問自答しながらも
幸い、まだやってみたい事も、欲しい物もある。

ありがたい事に、
来月や再来月の撮影予約もあって
まだもう少し、必要とされてても良いんだと思えるようにもなった。
もちろんだが、旦那さんに相談したところで、答えはGOである。

はぁ。

よし、
思い切って、カメラを買おう!

ポチるまで
何日も悩んだ。
カメラを買うこと自体じゃなく
それだけの価値が自分にあるのか、
考えれば考えるほどわからなくなって
あーーーとりあえず明日にしよう。を何日も繰り返したのだが、
もう最後、目をつぶってポチっとしてやった。
ポチっとしてしまえば、
不思議と腹が据わっていく感覚が心地よかった。

向いに座っていた旦那さんが
「欲しい物が、買えたの?」と聞いてくれて、
今、最高に欲しかった言葉をかけてくれたことに感謝した。

散々間違ってきたし
全然違って
何度も爆死しかけてきたけれど
そもそも小5男子だと思って期待しない事にして
どうにか受け流してきた今までの日々が
やっと報われたーーー!(と、心で叫んだ)

今、この瞬間に
「幾らだったの?」とか「ちゃんと払えるの?」とか言われても
まぁ、<満足感 で受け流してはいただろうが
だからこそ、「欲しい物が買えたの?」は想定外だったし
逆に、私、欲しい物買ったんだなぁ…ってしみじみと思ったら
幸せな気持ちになった。

主婦が欲しい物を買うのは、とても難しい。

子供たちの為でもない
旦那さんの為でもない
ただ、自分に投資する〇十万に、どれだけの罪悪感があるか。
妥協しない選択が、いかに難しいか。

綺麗になる為じゃない、必要最低限の化粧品にすら引け目を感じて
目の前のフラペチーノを我慢して、
自分の口には殆んど入らないイチゴを買い物カゴにいれ、
外食だって、いつも子供たちの食べられる物ばかりで
ただ伸びきった髪を自分で染めて、
日々ボロボロの手にハンドクリームを塗って
今日も生活の為の仕事をする。
みんなそれぞれ、少しづつだけど
生活の中に、自分だけの選択肢が無くなっていく。

誰に指示された訳ではないけれど
別に不幸でもないけれど
たまに、綺麗な誰かと比べては、
あぁ。私ってなんだっけ。と、切なくなる。

全然映えてなくて、全然だっさくて、全然庶民すぎる
そんなリアルな日々が、私の「暮らし」で、現実。
だからこそ、パートナーには、寛容でいて欲しいと願うのだ。

今は聞かなかくなった「スイートテンダイヤモンド」だって
きっと、詳細ひっくるめて、そういう事なのだ。
「僕の為に、綺麗でいて」とか
「会いたいから仕事早めに切り上げた」とか
「君と暮らせる僕は、世界一の幸せ者だな」とか
「大好きが止まらない」とか
「来世も一緒になろう」とか
死ぬ間際以外に
その類のことを言わなくて良い代わりの、ダイヤモンドなのだ。
これで、向こう10年、首が繋がるのである。

 

珍しく
小さな幸せで始めることが出来た、新しいカメラ生活。

カメラが新しくなったという事は
そろそろに15,000円みなこの卒業である。

大の苦手である
自分の価値を決める作業。

さて、次は、一体幾らみなこになるのやら。

お楽しみに。

 

つづく

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普段、投稿は2,000文字以内と決めている。
2,000文字以上は、サクッと読むには疲れてしまう長さらしい。
今回の投稿は、2,600文字。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

あぁ、あと、新年のご挨拶もまだでした。
今年もまったり書いていきますので
お付き合い頂けると幸いです。

 

みなこ

 

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